

2月11日、悪天候とトラブルで延期されていた、毛利さんの乗ったスペースシャトルがケネディ・スペースセンターから打ち上げられた。ここから西に約1時間の所にあるオーランドはディズニーワールドをはじめユニバーサルスタジオなど数々のテーマパークがあり、一年中、世界中の人たちで賑わっているハッピーな場所だ。
世界最大のゴルフショウ、PGAマーチャンダイズショウは、ここオーランドのオレンジカウンティ・コンベンションセンターで今年も2月4日から7日まで開催された。このショウは、ゴルフ関連産業の見本市であると同時に新製品の発表会でもある。会場は100M×1KMの巨大建物を使用し、各セクションのブースは1F部分の10万平方メートルを使用している。
この会場に入場するには登録が必要だ。登録が済むとバッジが渡される。バッジは色分けされており、主催者のPGA関係者はブルー、PGAメンバーはローズ、ゴルフバイヤーはオレンジのバッジで登録費無料、ゲストはグレーのバッジで$100となっている。カメラの一般使用は禁止だ。
出展者を大別すると、ゴルフ関連アクセサリー・衣料品・絵画コレクション・芝・バッグ・ボール・カート・シガータバコ・クラブ・ヘッドカバー・コンピュータシステム・コース設計・クラブハウス設計・コースメィンテナンス・商品陳列台・フィットネス器具・シューズ・家具・GPSシステム・ギフトアイテム・グローブ・グリップ・ヘルスケア・教育・製造・宝石時計・ロッカーベンチ・練習器具・練習場器具・ティタイム予約・リゾート関連情報・セキュリティ・シャフト・シュミレーションゴルフ・タオル・観光旅行・傘・ビデオ・ヤ−デージマーカー・サインなどがあり業種の多さに驚かされる。
ブースのスペースは、キャロウェイ、テーラーメイド、タイトリスト、コブラ、ピンなどといった大手メーカーが中央部分を占有しており、人の流れもこの辺が中心となっている。しかし、数では圧倒的に中小零細のメーカーの方が多く、巨大メーカーを取り囲むように配置されている。その中でゴルフ用品の子供用が目に付く、ゴルフ教育に関する各種の提案をしているメーカーや団体も非常に多い。
ゴルフはアメリカでは誰でも楽しめるごく身近なスポーツとして認識されている。国内のコース
は約20,000ヶ所あるが旺盛なゴルフ需要に追いつけず、毎年100ヶ所が新規オープンしている。このゴルフ産業の裾野の大きさは、PGAショウの出展者・出展業種の多さをみれば、一目理解できる。そして、この膨大な産業を支えているのがPGAオブアメリカであり、PGAプロフェッショナルだ。PGAプロはゴルフ産業の中枢部分で重要な責務をもって活躍している。ショウの出展メーカーには当然のことながらプロが数多く勤務しているし,各地のゴルフ場の重要なスタッフにもなっている。また、教育主体のプロの中には障害者専門のゴルフ指導者もいる。障害者でも楽しめる仕組みができているし、それを受け入れる環境も整備されている。このようにアメリカにおけるゴルフ産業は日本とは比較にならないほど多岐にわたっており、人々からPGAプロフェッショナルと呼ばれるゴルフのプロが数多くそれに携わり、ゴルフ産業をサポートしているのだ。
アメリカのゴルフの歴史は移民の歴史でもある。200年前ゴルフがスコットランドから伝播され、アメリカの明るい太陽のもと熟成されてきた。1960年代になりアーノルドパーマーの時代以降、広く子供から年配者まで楽しめる、手軽なスポーツとして認知されている。最近はタイガーウッズの活躍で、子供と白人以外のマイノリティと言われる人々のゴルフ層が拡大されたといわれている。しかし、以前はアメリカでも一握りの裕福な人達の遊びであり、非常に閉鎖的な遊びであった。1960年代以降アメリカのゴルフ場造成は、一般的には、荒地を緑化するという環境保全と相まって一気に増えつづけ、ゴルフ人口を拡大し、ゴルフを身近なものにした。しかし日本はアメリカと同じ道を歩まなかった。好景気と相まってゴルフを錬金の手段と捉えてしまったのである。日米のゴルフ産業の違いをこのPGAショウで目の当たりにし、誤った道の軌道修正をしなければゴルフ産業の健全な発展はないと痛感した。
アメリカでPGAプロフェッショナルと呼称される人達に接すると、何か紳士的で知的で温かい感じがする。この雰囲気は彼らがゴルフ産業を支えているという自負からくるものなのだろうか。アメリカでいうプロフェッショナルとは高度な技術を修得しているという以上に過酷な訓練や長期にわたる教育を受けた結果として与えられた称号であり、ゴルファーを正しい方向に導いてくれる集団でもあるのだ。
私達の国土には限界があり、もうゴルフ場はできないと思う。今ある施設を有効利用するには、多くの人々をゴルフに向けなければならない。子供も老人も。そのためには、指導者といわれる人々・プロフェッショナルと呼ばれる人達の質の向上が何よりも重要ではないだろうか。
ゴルフ場も料金を下げれば全くの素人しか来なくなる。コースが痛んでしょうがない。プレーが遅れるなどと言う。しかし、誰かが彼らに最も基本的なルールといわれるマナー・エチケットを教えただろうか。そのような施設や指導者が身近にいないため初心者は二の足を踏んでいる。気軽にプロと呼ばれる人達に接する機会もない、態度が傲慢だなどの理由で自己流に走っている。このような施設の受け入れ態勢や指導者の質の向上がなければゴルフ人口の拡大は図れないし、入場者減に歯止めが効かないだろう。
そして昨今のゴルフ場の入場者減は金儲けに走った経営者・それを享受しようとした者達への強烈なメッセージであることを忘れてはならない。


北米大陸から突き出したフロリダ州は、日本の面積の約1/3の広さで、南部のマイアミと沖縄はほぼ同緯度上にある。フロリダは沼と湿原に覆われている半島で、最も標高の高いところで海抜100Mという平らな土地だ。ゴルフコース設計者から見ればどこにでもコースが作れそうな理想的な地形だと思う。
PGAショウの期間中、オーランドの南のウィンターへブン市にある公営コース・Willowbrook(柳の小川)ゴルフコースでプレーすることになった。当日はショウの出展者や参加者がこのエリアのコースでプレーをしており、どこも混雑している。予約しないで行ったコースが満杯で、たまたま道路のサインを見ながら別のコースに向かった。
訪れたコースのクラブハウスは平屋でこじんまりしている。普通の住宅程度の大きさの建物が、松林の中にあるという感じだ。ショップでプレーできるか尋ねると、スタート係りにトランシーバーで連絡をとっている。OKだ。18ホールのプレーフィ$15.85とカートフィ$12.45合計$30を支払い、スタートに向かう。スターターが組合わせてくれた今日の相手は、ニュージャージー州から避寒で来ているグランドシニアのボブ、この地区に住んでいる仲良しゴルファーのバーバラとジャンだ。各人が簡単な自己紹介のあと、男女2名ずつ2台のカートでラウンドが始まった。
コースは全体にフラットで、時折コース内を走るクリークにボールを落としそうになる。全体的には河川敷コースといった感じだ。しかし、距離の短いホールはうまくクリークを配置しているため、時として刻まなければならない場合もあるなど、コースレイアウトをうまく考えている。
このコースの印象は、初めての人でもプレーしやすいように、コースレイアウトがしっかり表示してあることだ。また、ユニークなのはスコアカードがスポンサーの広告で一杯になっていることである。一枚のカードに17社の広告が載せてある。業種はペプシコーラがメジャーな会社であとは地元の建築会社・クリーニング店・レストラン・ゴルフスクール・不動産・宝石店・自動車販売店などの会社で、広告の中にはしっかりと割引券までついている。スコアカードやベンチに広告を出しているゴルフコースは珍しくはないが、ここまで徹底しているコースは初めてだ。
Willowbrookのような公営のセミプライベートコースは、このようにしてスポンサーを集めている。宣伝媒体としてスコアカードやベンチを使い、結果としてゴルフ場は経費削減を図っている。その金額は僅かかもしれないが、どんどん利用してもいいアイデアだと思う。

スコアにはあまりこだわらないタイプの4人がプレィしているため、流れはスムーズだ。コース内を走るクリークの岸辺では、2.5メートルもあろうかというワニが日向ぼっこをしている。ボールを拾おうとするあまり、ワニに近づき過ぎて噛まれて大怪我をしたケースもあるとのことで、ボールはロストになる場合もある。ここはフロリダなのだ。
プレー終了後Bobは先に帰ったため、3人で食事をした。ビールのピッチャー1杯と簡単なつまみをオーダーした。3人分で$15支払う。普通のコースは軽いつまみのフライドチキンやソーセージが一般的なメニューだ。テーブルに座る人もカウンターで簡単に済ませる人もいる。ちょうどテレビでAT&Tプロアマが放映されている。

ゴルフ談義の中でハンディキャップの話になった。一般的なゴルファーは、オフィシャルHCを持っているが、フロリダ州のゴルフ連盟(FSGA)がプロ・アマゴルファーにさまざまな角度から関与している。この組織の活動内容はハンディキャップサービス・ルール解説・ゴルフ場のコースレーティング計測・ジュニア育成・ボランティアなどである。ジュニアでメンバーになるには$5を支払えばよい。成人は内容によるが、$40の正会員が一般的だ。FSGAはメンバークラブ700ヶ所の会員と、個別会員105,000人を合計したボランティア組織で運営されており、一般的には殆どのゴルファーはFSGAの会員になっている。
FSGAの多くのメンバーは、この地区で開催される数々のアマチュア競技・そしてPGAツアー競技開催のボランティアとして参加している。バーバラとジャンは当然のことながら、FSGAのメンバーであり、会員証を携帯している。会員カードの裏面には過去20回のラウンド履歴が刻まれたシールが張られており、ハンディキャップが算出されている。アマ競技にはこのカードでエントリー出来るということと同時に、これがアメリカのゴルファーのIDカードなのだと実感した。

アメリカでのPGAツアー開催コースは年間120ヶ所以上ある。(シニア・LPGA含)これら開催コースは殆どがプライベートコースかリゾートコースである。これらのコースはビジターを厳しく制限している。
ゴルフでアメリカンスタイルというと開放的なイメージが強い。太陽の下、カート使用で、気軽にできるスポーツというイメージがある。しかし、歴史あるプライベートコースはいまだ一般人を拒否し続けている。独特のスタイルがそこにある。
このような閉鎖的なスタイルこそがクラブライフの原形であって、古い日本のコースもほとんどがこのようなスタイルだった。ゴルフは、スコットランドからアメリカにそして日本に伝播されてきたが、メンバーによるクラブライフはクラブやボールとともにゴルフ文化として伝わってきたのだ。メンバーのためのクラブは、本当に裕福な人たちや有名人の社交場であり、今でもアメリカにも日本にもこのような厳格なプライベートコースは数多く存在する。
ゴルフ場が少なかった頃は、このようなコースだけだった。しかし、豊かな時代になり、著名人や裕福な人達の予備軍が中心になって、我々もコースを作ろうという意識が芽生え始めた。この結果、各地で一般人のためのゴルフ場が作られていったのである。
アメリカのゴルフはアーノルドパーマー以降、一般人にゴルフを開放したことにより、子供から老人までできるスポーツとして発展してきたのである。
残念ながら日本は、高度経済成長の時期に、金儲けのための会員権商法を生み出してしまった。歴史あるプライベートコースに対抗し、一般人のための擬似クラブを量産してしまったのである。
金儲けに踊ったり踊らされたりするうちに空虚なバブルは終わった。根のない模倣クラブはひとたまりもなく崩壊した。
今、ゴルフ産業は変革期にある。ゴルフの持つ楽しさや難しさをより多くの人達と共有し、子供から高齢者まで全ての層に認知してもらうには多くの改革すべき事柄がある。
その第一はゴルフの指導者的な立場にあるPGAとJGAの意識改革が必要である。ゴルフをスポーツとして捉え、幅広く浸透させる努力が足りないのではと思う。指導者の育成にしてもPGAとして進むべき道が明解になっていない。一般人に解るような広報活動が不可欠だろう。ゴルフの好きな人にはもちろん、ゴルフに興味のない人達にこそ広報PRが必要なのではないだろうか。
第二は受け入れ施設のゴルフ場・練習場の変革が望まれる。以前のゴルフ場のハウス・受付等は妙に重厚感があった。単なるゴルフプレィに何でこんな施設が必要なのかと考えざるを得ない感があった。もっとシンプルにならないものだろうか。
利用料金もいち早く改善したいところだ。諸経費とは一体なんなのか、不可解である。プレィ費いくらですっきりすべき。客が大勢押しかけるともう客は要らないという姿勢になる。客がこなければ低姿勢では一貫性がなさ過ぎないだろうか。もっと淡々とそして真剣に営業をすべきだと思うが。
第三は早急な利用税の撤廃である。いつまでも利用税を撤廃しなければスポーツとして広く認知されない。贅沢な一握りの人達の遊びで終わってしまうし、料金も安くならない。贅沢な遊びではゴルフ業界の健全な進展は望めない。
今、全米では、3000万人のゴルファーを受け入れる17,000ヶ所のゴルフコースと10,000ヶ所の練習施設に雇用された25,000人のPGAプロフェッショナルとプロ研修生がPGAを構成している。USGAとPGAは一体になってゴルフを産業と捉え、教育・啓蒙・商業・生産そしてボランティア等の分野において社会に深く浸透している。
日本におけるゴルフ業界は未成熟の状態にあり、試行錯誤を繰り返している。バブルで健全な発展が疎外された結果だという見方もある。しかし、それはそれとして今こそ先進国の優れている部分を吸収すべきではないだろうか。
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